r-note

9月19日記  アゲハ

f0119425_08295342.jpg

ベランダで植物に水やりをしているたくやさんが窓から顔を出し

、こちらの様子を伺っている。なに?と訊ねると、一匹いる、と

応えるので、わけのわからないままベランダに出ると、ほら、と

指指す方向にアゲハの幼虫がいた。

今年アゲハは、ルーや山椒に産卵していくものの猛暑のせいか一

つも孵らなかった。

もう諦めていたから、一匹だけとはいえ、でーんと大きく育って

くれた幼虫をみられて、うれしい。

緑色の幼虫は、山椒の垂直の枝にぴったりと張り付いて、何かを

考えているような顔つきをして微動だにしない。

もう何も食べてないようだし、そろそろ脱糞をして蛹になるんだ

ろう。


9月19日の皿



[PR]
# by rika_okubo7 | 2015-10-10 07:15 | Trackback | Comments(0)

9月18日記  冷たい朝 

f0119425_07040947.jpg

まだ薄暗い朝、二の腕のいちばん膨らんでいるあたりの肌に、

ひたひたと冷たい風があたってくる。

大きく開けていた窓を半分閉める。

そのうち半分は三分の一になり、四分の一になり、風の冷た

さを見ながらほんのセンチだけ開けることになり、そしてと

うとう冬の最中にはぴっちりと閉めるようになるんだろう。


9月18日の食卓 




[PR]
# by rika_okubo7 | 2015-10-09 16:11 | Trackback | Comments(0)

9月17日記  六つのマル

f0119425_08063703.jpg

捨てられなかった崎陽軒のシュウマイ弁当の経木はきれいに洗っ

て日干しにして、ノートの表紙にした。

木の表紙なんて素敵だな、と思ったのだけれど、経木は大きくそ

って丸まってちょっとみっともない。

今日の献立を書き終えて表紙を見ていると、かつて経木とシュウ

マイが弁当箱の中で接触していたであろう辺りに円を描きたくな

った。六つ描いた。真ん中にのっているグリーンピースも描いた。

シュウマイは四つしか入ってなかった記憶もあるけれど、六はわ

たしのラッキーナンバーでもあるので、六つにした。

おなかがなった。おなかがすいていたからシュウマイを描いたの

か、シュウマイを描いたからおなかがすいたのか。いや単に何か

がつまらなかったんだろう。


9月17日の皿


[PR]
# by rika_okubo7 | 2015-10-09 15:40 | Trackback | Comments(0)

9月16日  兆し

f0119425_14072770.jpg

太陽がのぼりはじめたばかりの、まだ暗い朝に、

両の手が乾燥しているのを感じる。

冷たい風が交じりはじめた。


9月16日の食卓



[PR]
# by rika_okubo7 | 2015-10-09 14:49 | Trackback | Comments(0)

9月15日記  潤う耳

f0119425_07581393.jpg



ビック・ベンを思わせる公会堂の時計台を見上げる度に、かっこ

いいなあと見惚れた。それに、時間を積み重ねた建物はそこに建

っているだけで不安や心の角のようなものを取り去ってくれた。

それは、大きな木のような存在だった。

日比谷公会堂が大規模改修工事に入ると知ったとき、なんとも言

えない淋しい気持ちになった。

日比谷図書館にゆくと今日は公会堂が開館して(月の半分は閉館

している)何か催しものがあるようだから石段をのぼってみるこ

とにする。

エントランスは人で溢れかえっていた。動線は作られているよう

だが全く機能していない。一体なんなんだろう、と老齢の方たち

が手に手に持つ旗を見ると「鉄道退職者の会」と白抜きの文字で

記されている。

入口から出口までの直線をきりもみ状態で移動しながら、内壁や

レリーフやガラスの質感などを目にとどめる。

三菱一号館の中庭のカフェのテラスの前のベンチに座って本を開く。

人の話し声がちいさく聞こえるなかで本の世界に入るのが好きなの

だ。おちつく。

それに人が集まっている場所ではときどき面白い事も起こる。


9月15日の食卓





[PR]
# by rika_okubo7 | 2015-10-09 10:38 | Trackback | Comments(0)

9月14日記  定点は旅をする

f0119425_21282719.jpg

日常の時間の流れのなかで、少しずつ変化している自分には、気

がつきにくい。

ふとした時に「あれ?」と思う事もあるけれど、はっきりとした

形で現れることは少ない。

薄皮をむくように、日々変容してきたことに気がつくのは、馴染

みのある場所を訪れたときや、何年かぶりに会った人と話してい

るときなど(たとえば同級生)、場や人によってもたらされる。

友だちのお山の店は、じぶんを観測するにはもっとも適している

場だ。

先日訪ねたときも自分が変容し続けていることを感じた。

見えにくくなってきている対象と(何度も目をしばたいて、焦点

を定めても以前ほどはっきりと見えない。そこに集中できないと

もいえる)、はっきりと興味を向けている対象(たとえば草)の

差異を感じた。けれど、それがどういうことで、何であるのかは

今もわからない。


9月14日の皿




[PR]
# by rika_okubo7 | 2015-10-08 18:32 | Trackback | Comments(0)

9月13日記  ピラミッドの時間

f0119425_09380141.jpg

時間は左から右にゆっくりと流れてゆく。

ガラス張りの巨大なピラミッドの空間はがらんとして、ここにいる

人間はみんな小さく見える。

天上から下がっている垂れ幕のSt.Lukaという文字を何度でも読み

返す。若葉色の葉っぱと、緑と赤の線描きのデザインの意味を考え

る。

時間はときどきピラミッドの頂点のあたりで、いつまでも形を変え

ない雲のように留まっている。

時間は循環もしているのか右から左にもまた、ゆっくり流れてゆく。

サラダせんべいが入っていた薄い透明な袋を、遠くに見えるゴミ箱

に捨てにいく。ベンチに戻ってくると、食べ終えたサラダせんべい

のもう一つの袋が床に落ちていたので、ふたたびゴミ箱に向かう。

凪いだ大きな川に流れるような時間のなかを、羽ほどに軽い透明な

袋を手のひらにのせてゴミ箱に運ぶ行為はほとんど儀式だ。

いったん外に出て、夕方の月島に向かう。

一軒め酒場という安い居酒屋があるらしい。

日本酒170円、ビール380円、にごり酒250円。

テレビの前の大きなテーブルには一人で酒を飲んでいる男たちが座

っている。老女が店にやってきて窓際のテーブル席に座る。しばら

くするとまた老女がやってきて同じテーブルに着き「先に来てたの

よー」とさいしょの老女が話し始める。

どうやらここは地元の集会場のような酒場らしい。

大きなテーブル席がひときわ沸く。なんとかいう相撲取りが負けた

とか勝ったとか、そういうことらしい。

タカハシ氏の携帯電話が鳴る。St.Lukaに向かう。

Y子ちゃんは疲れていた。

けれどいつもどおりのやさしい笑顔。

お弁当をパクパク食べてくれる。

タカハシ氏とわたしはビールをごちそうになる。

Y子ちゃんは額に入った古い写真や、アルバムを見せてくれる。

幼いY子ちゃんは笑っている、弟のMさんも笑っている。

Mさんが子どもの頃に書いた絵はがきを声に出して読む。


9月13日記 




[PR]
# by rika_okubo7 | 2015-10-07 16:48 | Trackback | Comments(6)