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11月9日記 / 歩行が始まって

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Photo by TAKUYA

集中治療室で痛み止めの袋をたすきに掛けて、それからどうやって病室にもどったんだろう。
手術着からパジャマに着替えていろんなものをぶら下げたまま抱きかかえられて治療室を
出たのはなんとなく覚えてる。まだ麻酔が効いていたのか、記憶が薄い。

癒着予防のための歩行を看護師さん付き添いのもとで始めたけれど、眠いのと貧血でふらりとする。
倒れるくらい平気なのではとも思うが、頭を打つと大変なことになると看護師さんから歩行を禁止される。

今日もTちゃんは来てくれた。
「痛みはどう?」「痛くないよ」「じゃ、これからだよ」といたずらな目をする。
K先生とH先生が歩いてますか?と回診に来て、看護師さんに禁止されたことを話すと、とにかく歩いて下さいと言う。
困ったなあ、歩くのはいいけど、と考えているとTちゃんが「そう、どんどん歩くといいの。私の時は歩いて歩いて
熱だって41度か42度くらいまで出たけどここは病院だから熱出したって大丈夫なの、倒れたっていいの!」
と確信に満ちた調子で説いていると、病室を去ろうとしていた先生たちの声が二つ、
「倒れるのはこまりまーす」「倒れちゃだめですよー」と笑うこだまのように聞こえてきた。
Tちゃんを見ると、そうかそうかという顔でクックッと笑っている。
そうするうちに、たくやさんもやってきた。
疲れているようで、腰掛けるとすぐに眠りに入ってゆく。

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Photo by TAKUYA

看護師さんはみんないい人たちだけれど、今日担当の看護師さんはまた特別だった。
白い肌の丸顔も、うすっらピンク色の頬も、やさしく輝く丸い目も、声も仕草も人を幸せにする人だった。
小柄でぷりっとした体付きは体力があるだろうし、我慢のきく人だろうことも思わせる。
こっそり”りんごちゃん”と名付けたその看護師さんに、先生に歩く様に促されたことを話すと
「今日まで先生の権限はありません」と丸い目をくりくりさせてセキセイインコのような嘴で、きっちり諭された。
けれど二度三度つきそわれてトイレにゆくうち、ゆっくりなら一人で歩いてよいとお許しがでる。

トイレでふとした拍子に傷口を触ったときには背中がぞくぞくした。
ゴムのようなもので覆われており、その周辺を触っても麻酔のせいか感覚が薄い。
うっすら見下ろしたけれど、どこがどうなっているのか確かめる勇気はなし。

夜、廊下でT先生に会うと、歩いている姿を嬉しそうに見て
「昨日手術をしたとは思えないでしょ、今日歩いておくと明日がまた楽だから」と自信ある目でそう言った。

枕元に、きのうKちゃんが持ってきてくれたお手製のドリームキャッチャーを置いて眠った。
Kちゃんは術後夢見が悪かったらしく、それを思ってくれてのこと。
実際に夢見は悪かったのだ。
夢の事まで考えてくれるなんて、ほんとうになんて優しいんだろう。ありがたくて、仕方ない。
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by rika_okubo7 | 2013-11-20 09:12