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3月28日記 何となくコワーイ

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二月の大雪で氏神様の境内の古い樹が随分と倒れ、その後たくさんの若い桜が寄進された。

ちょうど境内の通り道に咲いているその桜の一本が、お日様の光を浴びて、

ぽわっと浮くように、頼りない姿で咲いていた。


夕ご飯の支度をする気になれず、それにラーメンと餃子が食べたかったから、

先隣の東陽町のローカルフード、タンギョー(タンメンとギョウザ)

を食べに行こうと、たくやさんを誘う。



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久しぶりに訪ねた来々軒は、ホールを仕切っていた髪型も化粧も八代亜紀似のおばちゃんも

女将さんの姿もなく、威勢のよい若い男子二人に迎えられ、店のいくぶん寒々した様子に

ここもまたチェーン店になったのかとがっかりしたけれど、早合点だった。

温厚な店主は健在で、ほっとした。

たくやさんは”タンギョー”わたしは”ギョウザとライス”を注文する。


出掛けに本棚から適当に引き出して来た洲之内徹の”人形を見た人”をなんとなく開くと、

「ピンク色の月」という章の冒頭ページだった。

”日本的なものには何となく怖いところがあるというのだ。

義太夫なんかでも何となくコワーイでしょ”という辺りまで読むと、

サービスの野菜の皿が来たので本を閉じた。

「ラー油をかけて下さいね」とにこやかにうながされて、いわれた通りにする。

サービスの皿は、おなかいっぱいにして帰してあげたいという店主の優しさから、

何を注文してもタンメンの野菜が前菜のように提供される。

すこし食べ、けれどギョウザもご飯も来る気配がないので、また本をなんとなく開くと

さっきと同じ「ピンク色の月」ページが開かれた。

こういう時、あれ?と思う。適当に開いたのに同じページだったり、

しかも、さいきん気に掛かっていることに繋がりそうなものが目の前に現れると

”向こうからやってきたのかもしれないな”、なんて思ってしまう。

一度読んだ行をまた読み返して”何となくコワーイ”にそうそうと頷く。

義太夫もそうだけど、日本の怪談というのもずるりとした気配にみちて

”何となくコワーイ”。お盆の頃にこぞって放映される怪談話が怖くて怖くて

ほとんどは指の間から見ていたけれど、どろーんどろーんと始まると耳も目も閉じた。

スイッチの入っていない沈黙したテレビがただ部屋にあることさえ怖かった。

「ピンクの月」の峰村さんは子どものころ、お父さんが蓄音機で聴いていた義太夫の語り声や、

三味線の音が怖くて、もっと写実的な音楽、森の鍛冶屋なんかを買ってきて聞いていたらしいけれど、

わかるなーと頷く。

子どものころお土産に本をよくもらったけれど、いくつかの日本の文学文章を読んでいると

何となく薄汚いような光景が脳裏に広がり、その上小さな手で体をぺたぺたと触られるような

いやーな感じもあって、読み進む事ができなかった。

その代わり、外国の子ども向けのミステリーやSFは大好きだった。


”森の鍛冶屋”は確かに写実的でしかも昼時の明るい時間のことだけど、

西洋のものでもシューベルトの”魔王”は夜の森の魔王の気配というのがもう怖くて

仕方なかった。

けれど、背中の毛を逆立て涙目になりながらも繰り返し聴いていたのだから

その実それほど怖くなかったのかもしれない。






昼ご飯 滋賀麩と茨城餅のおうどん





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タンギョーと餃子ライスの夕べ


サービスのお皿





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餃子とごはんはなんと550円。良心的だなあ。

お漬物もスープもついてますよ。



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by rika_okubo7 | 2014-04-09 08:58