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3月31日記  銀座みやざわ / 豚とおっちゃん

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カツサンド ミックスサンド(ツナ 玉子)


夕方近くたくやさんに連絡するとどうやら500メートルくらい離れたところにいるらしいので、

一緒に帰ろうと言うと「あそこ行く?ほら、例のサンドイッチの店」と浮きっとする提案。

こういう時は頭の巡りも血の巡りもよくなり、夕べちらりと見た地図が前頭葉辺りの

スクリーンに映し出され、たぶんこっち、と歩いて行くとピタリ当たった。

おもしろい店だった。昭和のまんまの喫茶店である。

茶色のビニール張りの椅子、テーブルには中濃ソース、紙ナプキン、シルバーのシュガーポット、

スジャータ山盛りの皿、そして喫煙率は90%。カウンターの中の白衣のオニイさんも

くわえ煙草で仕事をしているし、私たちのテーブルの左も右も吸っていて、

左のたばこ吸いの長い付けまつ毛の女二人は私たちが店に入った時からぼろぼろと泣いて

けれど笑ってもいて、女たちの話を聞いているクラブの支配人開店前風情の男は

足を組みたばこをプカーと吹かしていて、意味もなく”ああ、いいねえ”と思った。

レフトアローンがたばこのヤニで焼けた天井のスピーカーから降ってきて、

黒電話はじりりりと鳴り壁では無言のTVが野球中継を映し出している。

右のテーブルに運ばれていった、生姜焼き定食を横目でちらりと盗み見をすると、

男が”いただきまーす”といって割り箸を割り、水のグラスに箸の先を突っ込んだかと思うと

氷を一つ引き上げみそ汁にすぽんと投下した。

ああそうだ肝心のサンドイッチ、

特に玉子のサンドイッチが印象に残っています。ふんわりとやさしいお味でした。

お店のマスターとマダムも善いお顔をされていました。無理のない笑顔が素敵だったなあ。

銀座は”みやざわ”です。銀座のクラブ御用達のお店でもあるそうです。


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宅配の最終便の午後九時も過ぎたころ、本が届いた。

早く見たくてバリバリと封を開ける。

”豚とおっちゃん”という写真集が出て来た。

バラバラと見てもう一度バラバラとページをめくって

豚にまみれて豚を育てているおっちゃんと、おっちゃんに育てられている豚の姿に”わーん”と泣く。

頭で考え始める前に今の”わーん”を送り主の山の上の友人に伝えたくて、すぐにメールをした。


3月の初めのころだったかテレビの地中海の小さな街を旅する紀行番組で、

迷路のような道を羊を散歩させている子どもたちに取材の人が「ペットなの?」と訊ねると

「ううん違うよ。生け贄なの、お祭りの時に食べるの」と嬉しそうな顔で答えた。

側にいる大人たちも穏やかな笑みを浮かべて取材に答えていた。

家族で羊を可愛がっている様子にその時も”わーん”と泣いた。本来だなあと。

おっちゃんに育てられた豚は、さぞかしおいしいことでしょう。

子どもたちに育てられた羊も、さぞかしおいしいことでしょう。

顔を知っている動物の甘く濃い肉を、涙を流しうまいうまいと食べたいなあと思いました。


豚とおっちゃん








昼ごはん

カレーライス

じゃがいものガレット

ピクルス


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夕ごはん

みやざわのサンドイッチ



by rika_okubo7 | 2014-04-17 08:16