人気ブログランキング |

r-note

つがいの鳥   11月4日記 


f0119425_11041656.jpg

たくやさんが車両を覗き込んで戻って来た。

”一番前じゃないけど、二番目だよ”と言ってにやに

やしている。

バスだったら一段高い見晴らしのよい後部座席、電

車なら一番前の風景がよく見える座席、ジェットコ

ースターも一番前の席に座ってわくわくしていたい。

今日は新幹線の鼻先にごく近い席に座って盛岡まで

走り抜けるのだ。

車内販売が巡ってきたところを網で捕まえるように

お弁当を買う。

わたしは牛飯、たくやさんは五目飯。

景色を眺めながらわしわし食べてお茶を飲んだら、

きのうほとんど眠ってないせいか瞼がおちた。

イオンに寄って滞在中の食料品を買い込む。

三泊四日鍋、と決めた。

夜は鍋、昼は残ったお鍋の汁でお雑炊か麺類。

それにしても、空が東北だ。

”相変わらず独特だなあ”というと、たくやさんも短

く返事をして、重い表情で見上げている。

人を黙らせるのに十分な空だ。

苦しみがばかりがあって、悲しいなんていうことは、

忘れてしまっている空だ。

山の家の扉を開けようとすると、その日は確かに風

が強かったけれど、杉林の方からビューッと驚くほ

ど的確な風が真っすぐに吹いてきて、それはなんと

いうか歓迎されたとしか思えなかった。

家に入ると薄闇の床に白い点々が散乱している。

鳥の糞?

嫌な予感を抱えながら家の窓を開けて歩く。

トイレに絶えた果てた鳥が暗い色で固まっていた。

リビングのカーテンを開けると、白骨化して抜け落ち

た羽根に囲まれた鳥がまた一羽。

どこから入ったんだろう。

窓を開けると骨を囲んでいた羽根が風に飛ぶ。

薪を買いに行ったたくやさんが戻って来て、ストーブ

に火を入れる。

たぶんツガイだったのだろう。

二羽一緒に火に焼べて手を合わせる。

夜はグールドのゴールドベルク変奏曲のDVDを見なが

らお鍋を食べる。

なんだか変な感じだった。

部屋の中にまで闇が滲んでいるせいなのか、それとも

ラジオの電波もろくに入らない場所にいるせいなのか、

アルタミラ洞窟の中で炎を囲み肉を食べながら、文明

の光を見ている人間になったような気がした。


お夕飯

豚肉の白菜鍋。

f0119425_11041984.jpg





by rika_okubo7 | 2014-11-17 11:11