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8月22日(土) よいお天気

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今日はひさしぶりにゆっくりした。それにとてもよい一日だった。

まず、築地に向い母に頼まれていた経木を買い、場内の鳥藤で親

子丼しおを食べる。そのあと日比谷図書館に足を伸ばし本を借り

る。と、ここまでは常日頃なのだけれど、たくやさんは図書館内

で本を読んだ。日比谷公会堂を見上げる窓際の席に座って集中し

て読んでいた。その姿が嬉しくて本を探しながら時々横顔を見に

行った。穏やかな光がさしこむ図書館でたくやさんが本を読んで

いる、その光景は特別な一日のひとつの出来事だった。本に区切

りをつけて、図書館を出て喉をうるおすことにした。売店で水を

買い日比谷公園のベンチでくつろぐことも考えたけれど、ここが

いいんじゃない?と示された日比谷公会堂の一階のアーカイブカ

フェに入る。扉を開けると混雑して異様な雰囲気が波打っていた。

丁度席を立つ人たちがいたので、わたしたちはその席に座り、そ

の華々しい異様さについてじっくり観察することが出来た。胸が

高鳴る。それはなんというか非常にゴージャスで現実離れしてい

た。二階分ほどある高い天井のれんが造りのスペースはカフェと

いうよりヨーロッパの古い駅舎の待合所に似ている。店内にひし

めいている人たちは平均年齢75歳というところで総じてお洒落、

オーソドックスかつ煌びやかな出で立ちをして、年齢のせいか体

が不自由な人も多い。個性の強い一種エレガントともいえる老齢

の男女がひしめいて、お茶を飲み一様に何かを待っている雰囲気

は、ここは三途の川を渡るための待合所ではないか、という夢想

を抱かせ、フェリーニの映画撮影所に身を置いているようでもあ

った。なかなか出てこないミルクかき氷とアイスカフェオレを待

つ間、パブロカザルスの奏でる鳥の歌やトロイメライに耳を傾け

る、蓄音機を眺めたり、日比谷公会堂の年表を読み、かつて公会

堂で演奏会を開いた人たち、例えばケンプのモノクロ写真を眺め

る。そうするうちに、ある時一斉に彼らはカフェを去って行った。

店は一気に静かになり、一体何事だったのだろうと、店の人に訊

ねると、これから公会堂で夏のジャズフェスティバルがあるとお

しえてくれた。なるほど、謎が解けた。何かを待っている雰囲気、

お年を召したお洒落な人たち。三途の川を渡るなんて思ってごめ

んなさい。けれど目覚めながら夢を見ているような素敵なひと時

でした。店主は客が引いたので、と蓄音機をかけてくれた。最初

の曲は知らない音楽であえていうなら、フレッドアステアの映画

を思い出させる、そんな曲調だった。わたしたちは蓄音機の前の

ソファに移り次のレコード、ハイフェッツのチゴイネルワイゼン

耳を傾けた。


8月22日の皿



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by rika_okubo7 | 2015-09-03 10:03