夕暮れ 11月6日記
そろそろ真剣にやらないといけないんだけれど、首にストールを
巻いたりしてごまかしている。
あと数日で立冬。着るものがない。
洋服掛けに並んでいるのは夏の麻、薄手の木綿。
まだ暖かい日もあるからシャツ一枚で外に飛び出すと、世の中の
人は重ね着をしている。毛物のコートを着ている人もいる。
夕方靴の紐をキュッと結び日本橋まで歩く。
たくやさんは麻わたしは綿の服を着て。
佃大橋を渡るとき足がとまる。
陽が落ちた空には夜がはじまり、水平線のあたりには青から夕焼
け色の諧調が広がっている。深い紫色に揺れる川を弧を描くボー
トは上流にむかい、桃色の提灯をさげた屋形船は客を乗せ夕焼け
ののこる東京湾にむかう。
わたしたちがいつも渡っているかちどき橋は、緑と青のライトに
彩られて、はじめて見るもののように目にうつる。
薄闇にいっかしょぼわりと光が浮かんでいる、あたたかい光につ
つまれたちいさな建物は、しずかに十字架をかかげて、あれはセ
イルカだ。
聖路加タワーに目をうつし、Y子ちゃんは来ているんだろうかと、
9階のあかりを探す。
新富町を抜け、銀座一丁目に出る。
ホテル西洋銀座のビルが取り壊されて、更地の向こうに新しく建
ったビルの景色がひろがっている。
明治屋も耐震工事を終えて店のなかは太陽を抱え込んでいるよう
に明るい。
今夜秋の虫は鳴かなかった。
by rika_okubo7
| 2015-11-07 09:18